顧客の課題をデザインの力で解決。そのコンセプトを支え続けるAutoCAD

本当に必要とされる価値あるものを導き、デザインする

ヒトコトバ®のデザインで、新たな可能性の創造をおこなうアーキテクトチームをリードしている坂入氏。世界的なアワードのノミネート実績でも証明される仕事の裏には、学生時代から信頼し、使い続けているという AutoCAD の支えがあります。

遊ぶときこそ真剣に。それがモクシー

世界最大のホテルチェーンであるマリオット・インターナショナルによる、楽しさを追い求める次世代の旅行者をターゲットとした新たなブランド = MOXY (モクシー) ホテル。当ホテルは、2014 年にミラノでオープン以降、欧米諸国やアジアで展開されています。節約志向で SNS での体験をシェアすることが好きな新しい世代の旅行者やノマドワーカーに向け、インスタ映えする活気溢れるロビースペース、フレンドリーなおもてなし、体験型のプログラムなどを展開する“新感覚”のホテルとして定着。2017 年 11 月には日本上陸を果たし、大阪・本町と東京・錦糸町にオープンしています。

ミニマルながらもスタイリッシュなラウンジの一角。各所に MOXY のエッセンスである「ローカル、インダストリアル、ボヘミアン」を織り込んでいる [画像提供: ワイズ・ラボ]

そのひとつである「モクシー大阪本町」は、大阪のエネルギッシュな繁華街「ミナミ」をテーマにオフィスビルをコンバー ト。快適さを犠牲にすることなく不要な要素をすっきり削ぎ落とす潔さと、高いデザイン性の両立が評価され、英国のライフ スタイル マガジン「Wallpaper*」の Best Urban Hotel Awards 2018 にノミネート。そのインテリアのデザインと設計をワイズ・ラボ株式会社が手掛けています。

新しい価値の提案と具現化のための仕掛けづくりをおこなう専門家集団

ワイズ・ラボは、商業施設のブランドづくりや働き方を改革するオフィス、ライフスタイル マンション、船舶デザインまで、多彩なコンサルティング・設計・デザイン業務を手がける設計事務所。同社の代表取締役社長で、チーフクリエイティブオフィサーを務める坂入充氏は、人々の心をつなげ、コミュニケーションを生み、場に命を吹き込むデザインを生み出す 《ヒトコトバ》 というデザインフェイス (Design Faith) を提唱しています。

米テキサス A&M 大学の建築学部を卒業後、黒川紀章建築都市設計事務所、JLL、PIJ、SL+A で重要なポストを担ってきた坂入氏は、日本国内で AutoCAD が知られ始めた黎明期から使い続けている人物でもあります。顧客が本当に必要とするものを導き出し、それをデザインの力で解決するという同社の業務においても、氏は学生時代から使い続ける AutoCAD に絶大な信頼を置いています。

ラウンジおよびフロントとカフェ・バー機能を兼ね備えるカウンター [画像提供: ワイズ・ラボ]


日本のインテリアデザインにおいては、コンセプトと最終的なデザインがマッチしていない場合も多いように感じるという坂入氏は、自身にとってのコンセプトは 《課題解決の定義》 だと語ります。「よく若いデザイナーが、コンセプトは“白”とか“癒しの空間”などと曖昧な表現をするのを耳にしますが、それは単なるデザインのアプローチでしかありません。また施主の担当者が“つくりたいもの”ありきで、“解決すべきこと”が明確になっていない場合さえあります。私が考えるコンセプトとは、『抱えている課題を明確にして、それをどのように解決して、世の中に提供し、共感を得ていくのか』だと思っており、デザインがその解決の唯一無二の手段であると考えています」。

MOXY の場合は、お金と時間に余裕のある大人だけではなく、節約傾向にある若い人たちも積極的に取り込み、ホテルをもっと利用してもらうことが根底にありました。「その一方でホテル側としては、より効率的なオペレーションを実現しながら、ゲストに満足していただく必要があります。こうしたホテル業界全体が抱える問題を、MOXY ではミレニアル世代向けのテイストや遊びを仕掛けて、彼らが楽しめる場所とすることで解決しようとしています」。

その実現のため、オペレーターとも綿密な打ち合わせが行われました。「“こう使ってほしい”という想いが設計者にあっても、ただ場をデザインするだけでは、最終的に運営スタッフまでそれが伝わらない。結果、意図したものと違う使われ方をされてしまう。これが、知らざれる設計事務所の抱える“憤り”でした」と、坂入氏。

大阪らしさ、モクシーらしさを取り入れながら、ゲストが体験する「シーン」をデザイン [画像提供: ワイズ・ラボ]


それに対して、ワイズ・ラボが重視したのが“シーン作り”でした。「そこに足を踏み入れ、1 日を過ごすゲストがどのような体験をして、そのために何が必要かを綿密にプランしました。MOXY の設計に際しては、ブランドのガイドラインで決められている部分もあるのですが、1 階のパブリックの部分に関してはコンセプトづくりから比較的自由に決められたので、こちらからゲストへの体験を提案して、とてもクリエイティブにデザインすることができました」。

MOXY は、言わば“遊び場”だと坂入氏は続けます。「若い世代が集まり、飲んで食べて、踊ってという“遊び”を、ホテルという“場”を通じて気軽にしてもらいたい、ということですよね。MOXY には宿泊でなくても気軽に訪れて、友達同士でゲームでもやりながら一杯飲んだり、リフレッシュしたりできる。WiFi も整っているし、すべての席にコンセントがあって、それこそ仕事の合間に充電しに立ち寄ってくれる。そういう場を提供することが新しい試みであり、それが今後、日本にどう馴染んでいけるかという “コトづくり”がこれからすごく大事で、そのための仕掛けが必要ですね」。

パブリックエリアの展開図 [画像提供: ワイズ・ラボ]


業務効率と安定性を支えるプラットフォーム

現在、ワイズ・ラボで AutoCAD を使用しているのは設計の担当者 7名。同事務所のスタッフは「プロジェクト オリエンティッド(指向)」を特徴とする構成となっており、1 つのプロジェクトに役割の異なる様々なメンバーが関わることになります。設計作業においても同様で、プロジェクトの規模や用途によって、アーキテクトやデザイナーが設計図を描いているときに家具や設備の担当者も図面に手を加える、といったことがあります。

関係者が多くなると、よく課題となるのが情報共有の”スピード”と”スムーズさ” です。「AutoCAD であれば、出張先や打ち合わせ後などに AutoCAD モバイルアプリを使ってスタジオで作業してもらっているスタッフの図面をその場で直ぐ呼び出したり、共有ビュー機能を使って関係者とコンセンサスを取ったりできるのでとても便利です」と、坂入氏。

また、少数精鋭のワイズ・ラボでは一度にたくさんのプロジェクトに関わることが多いため、業務効率に大きく影響する、進捗チェックの”仕方”と”され方”に配慮してきたと坂入氏は言います。「そんな中、2019 バージョンから搭載された図面比較機能がとても役に立っています。これまでは、変更箇所が分かる『確認図』というものを進捗チェックの度に作成していました。新しい図面比較機能にはいくつかのメリットがあります。私の立場で言えば、簡単に変更箇所が確認できるのでとても助かりますし、スタッフは変更前と後の図面を保存しておくだけで済むので、確認図を作成する手間が省け、業務時間を短縮することが出来ています」。

「圧倒的に安定していますね。操作性、互換性の部分で、本当に間違いがない」と、その信頼には現在も揺らぎはありません。実際の作業ではクラウドを利用して分業を行い、設計以外の担当者ともコラボレーションしながら作業が進められています。「パートナーとなる企業との連携の際も、文字化けや図面のラインの崩れなどがあると、大幅なロスが生まれていまいます。AutoCAD は、どこでも共通で使える、一番信頼性の高いプラットフォームだと思っています」。

MOXY は 2020 年夏、国内 3 カ所目となる「モクシー大阪新梅田 (仮称)」(大阪市福島区) をオープン予定。そのインテリアの設計・デザインもワイズ・ラボが担当しています。「新梅田をどういう場であるかと捉えた上で、この MOXY のあるべき姿について提案を行ったところ、オペレーターからは MOXY を良く理解しているという評価と、施主からは新梅田における新たな MOXY に期待しているというコメントを頂き、コンペに勝つことができました」と、坂入氏。「重要視されたのは、ローカル、ボヘミアン、インダストリアルという 3 つのキーワード。これに対し、ただのブランドコピーをデザイン提案するのではなく、ローカライズにおける現状の課題定義と解決法を含め、よりイノベーティブなコンセプトを打ち出したからこそ、我々の提案が共感を得たのだと思います」。

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